2011年10月30日日曜日

地域型アートプロジェクトと美学的体制の揺らぎ

地域型アートプロジェクトが現代アートの最前線、と聞けば首をかしげる人もいるだろうが、見くびってはいけない。その現場は作家にとっても見る人にとっても運 営する人にとっても、予測のつかない出来事の連続である。


ある美学的な規準によって根拠づけられた体制、例えば美術ジャーナリズムや美術アカデミズム、そして美術マーケットなど、そこに関わる様々な立場の人たちを、良くも悪くも規定してきた美学的体制(ランシエールを参照)を揺さぶるような出来事が、その期間中、日常化するのだ。

今回立ち会った奈良の町屋アートプロジェクトHANARARTでは、町屋の一空間と作品との関係、ある作家に割り当てられた空間と他の作家に割り当てられた空間との関係、それを包摂する町屋という建物の構造と外観、その町屋が属する都市空間 、そういったレイヤー状の諸領域が関係し合う空間構造を自在に行き交う領域横断的な感覚的結びつきなどによって、フタを開けて現前化しなければけっして理解し得なかった力動的な美学が立ち上がったのだ。


このようにホワイトキューブとは全く異なる問題を孕む地域型アートプロジェクト が作家たちの展示の場として一般化しつつある今、すでに現代アートを規定してきた美学的体制は相当な揺さぶりを受けているとみて間違いあるまい。

それを認めたくない権威者たちは、早晩取り残されていくことだろう。

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