2016年10月12日水曜日

小松原智史 展 「コノマエノコマノエ」(the three Konohana/大阪市此花区)

意識にまとわりつく「意味」への縛めから、つねに「無意味」の場へとすり抜けるように描き続ける小松原さんの二年ぶりの個展は、いつも「意味」に固執する私のアタマの中に澱んでいる夾雑物をすっきりとリセットしてくれるような、すがすがしさがあった。
描かれている図像そのものは、目を凝らしてみるとなかなかにおどろおどろしいのだけれど。そのギャップがとても面白い。

ギャラリーを後にするやいなや、その意味を考える時間に戻ってしまわざるをえない私にとっては、たとえつかの間ではあっても、小松原さんが描く場所に共にいる時間はさわやかなものだ。

入り口を入って階段を昇ると開けるホワイトキューブで展開するのは、設営中の期間を含めると約2ヶ月にわたって変化し続けるワークインプログレス作品。点々と設えられたタブローの外側へと増殖するように、壁一面にそれは拡がる。使っているのは墨と付けペン。

 初日(9月2日)の様子。

 10月10日の様子。

奥の和室に設えられた作品。

この奥の和室の壁は何枚ものタブローによって隙間なく埋め尽くされているのだが、ここには私たちの感性をざわめかせる、まるで情念が淵のように滞留したアウラがある。

それに対し、白い静謐な空間に線が引かれ、図像が次々と現れるホワイトキューブでは、アウラは滞留していたものを濯いでくれる、せせらぎのように流れていることが感じられる。
これは描き出された図像という現象、その微細で深い世界から、自然と適度な心的距離がとれることによるのだろう。そこにどんな秘密があるのだろうか。

いずれの部屋にあっても、絵画におけるオートマティスムを、極めて高い純度で実践する作家の営みに立ち会うことができる。



◆小松原智史 展 「コノマエノコマノエ」(Konohana’s Eye #13) the three Konohana 2016.9.2-10.16